毎年この時期になると、校長先生から声がかかります。
「うちの学校は大丈夫かね」
また今年もか~。
この件については、前から言いたいことがありました。ちょっと長くなりますが、書いていきます。
まず、理科の教師ならば、誰でも硫化水素の危険性は知っていますし、教科書の方法に従って、安全に生徒実験を行わせようとしているはずです。換気も十分しているでしょう。決して、危険性を軽視したり、適当に実験を行わせているわけではないと思うんです。
それなのに、このようなニュースになってしまうのは、多分こんな感じじゃないかと思うんです。(実際にその現場にいたわけではないので、私の推測です。すいません)
・塩酸を、スポイトで2,3滴入れるつもりが、つい力が入って、もっと入れてしまって、ウワーッ!
・塩酸を2,3滴入れたけど、何もにおいがしない。先生はだめだって言ったけど、もう少し入れてみたら、ウワーッ!!
つまり、この実験方法がもともと良くないんじゃないかと思うのです。
私も以前は、教科書通りの方法で実験を行っていましたが、ちょっとこれは危険だなと感じて、今は別の方法で行っています。
それが「塩酸ドボドボ方式」です。
塩酸の濃度は同じですが、入れる量を2,3滴ではなく、5~10mlくらいドボドボ試験管に入れます。
ポイントは、硫化鉄がすべてつかるくらい、たっぷり入れることです。
すると、硫化水素がどんどん発生しますが、何もにおいはしません。硫化水素は、水に溶けやすいため、最初は空気中に出てこないのです。
「先生、何もにおわないよ」
なんて、生徒が言ってるうちに、水に溶けきれなくなった硫化水素が、空気中に出始め、
「先生、何か臭いよ」
と言い出します。
そこで、すかさず各班の試験管を素早く回収してまわり、生徒からできるだけ遠く離れた場所(屋外とか)に置いてきます。
これで、臭かった記憶だけが生徒に残ります。
この方法には、もう2つ良い点があって、
・気体の発生が、泡として、目で見て確認できる。
・鉄と硫黄を混ぜただけの物にも、塩酸を入れて、無臭の水素の発生を確認するのですが、実際は臭いがします。これは多分、混ぜただけでも微量の硫化鉄ができ、そこから硫化水素が発生していると考えられます。この「塩酸ドボドボ方式」では、硫化水素はすべて水に溶け、無臭の水素だけ空気中に出てきます。
実は、今使用している東京書籍の教科書では、塩酸を使うことは「別法」として、必ず行うとはなっていません。その危険性のためでしょう。
ですが、この火山の多い日本では、火山からの硫化水素も多量に発生しており、死亡事故も起こっています。このにおいを知っておいて、素早く避難できるようにしておくのは大切なことではないでしょうか。
教科書会社のみなさん、どうかこの「塩酸ドボドボ方式」、検討していただけないでしょうか。